昨日「山本(白瀑)を楽しむ会」を開催致しました。
ご参加頂きましたお客様、誠にありがとうございました。
「山本(白瀑)」を醸しているのは、秋田県八森村(現 八峰町)に蔵を構える山本合名会社さんです。
創業は明治34年(1901年)の老舗蔵です。
昭和40年代初頭には、全国に先駆けて大吟醸を商品化し、料亭などで好評だったようです。
現在は6代目となる山本友文(ともふみ)さんが蔵元杜氏として陣頭指揮をとっています。
山本さんは1970年秋田県に生まれ、能代工高を卒業後、アメリカで機械工学を学びました。
卒業後、学生時代に音楽会社の通訳などのアルバイトをしていた縁もあり、東京の音楽プロダクションに入社しました。
全国ツアーや海外出張など充実した日々を送っていたようです。
ちょうどその頃、山本合名会社さんでは叔父にあたる方が代表を務め、その息子さんが東京農大を卒業後、後継者として働いていました。
ところが、息子さんが急死してしまい、代表を務めていた叔父も急逝してしまいました。
工場長をされていた山本さんの父親が急遽、代表となりましたが、現場だけを見てきた方で、経営にはノータッチだったこともあり、売り上げは落ち込んでしまいました。
そこで白羽の矢が立ったのが、東京にいた山本友文さんでした。
平成14年(2002年)32歳のときに蔵に入ることとなります。
しかし当時の「白瀑」は、日本酒そのものの品質があまり良くなく、思うように買ってもらえません。
品質向上を目指し試行錯誤を繰り返した末、とうとう杜氏制を廃止し、自ら酒造りをすることにしました。
酒造りの経験もなく、全くの素人でしたが、秋田県の醸造試験場のサポートも得て、何とか日本酒を造ることが出来ました。
能代市にある天洋酒店さんからは、これまでの「白瀑」という銘柄ではなく、新たなブランドとして販売することをアドバイスされました。
そして、立ち上げられたブランドが「山本」になります。
その後は生産量、売上ともに増え、経営も安定してきました。
平成22年には本醸造、大吟醸といったアル添酒を廃止し、純米、純米吟醸、純米大吟醸のみを醸す純米蔵となりました。
またその年は、秋田の若手蔵元技術集団「NEXT5」を結成した年でもあります。
その後もユニークなお酒を販売するなど、さらに注目されるようになりましたが、今後は更なる品質の向上に労力を注いていきたいということです。
また海外進出にも力を入れていきたいということで、飽和状態に近い北米ではなく、東南アジアを中心に販売することも計画しているそうです。
それでは今回の出品酒ですが、乾杯酒を含めまして合計16銘柄です。
この中で乾杯酒とさせて頂いたのは…
一番右端にあります「山本 純米大吟醸 木桶仕込み アイスピンク」です。
秋田杉の木桶で仕込んだ「山本」シリーズ最高峰となる29%精米の純米大吟醸です。
昨年の28BYからリリースされましたが、高級酒特有の綺麗な味わいをご堪能頂けたようです。
皆さん、大絶賛されていました。
その他右から順番に…
①山本 純米大吟醸 木桶仕込み アイスブルー
②山本 純米吟醸 白 生原酒
③山本 純米吟醸 ドキドキ
④山本 純米吟醸 冷して飲む山廃
⑤山本 純米吟醸 美郷錦
⑥山本 純米吟醸 備前雄町
⑦山本 純米吟醸 亀の尾
⑧山本 純米吟醸 和韻
⑨山本 純米吟醸 ピュアブラック
⑩山本 純米吟醸 ミッドナイトブルー 生原酒
⑪山本 純米吟醸 6号酵母 生原酒
⑫山本 純米吟醸 7号酵母 生原酒
⑬山本 スパークリング 純米吟醸
⑭白瀑 礼 純米大吟醸
⑮白瀑 ど 純米 にごり酒
①は乾杯酒と同様、木桶で醸した純米大吟醸です。
乾杯酒とは原料米、精米歩合、酵母のすべてで異なりますが、同じ木桶仕込みということで飲み比べて頂きました。
こちらもご好評でした。
山本合名会社さんと木桶は相性がいいのでしょうか。
②は自社棚田栽培の「酒こまち」で醸したお酒です。
山本合名会社さんでは、裏山の中腹から湧き出る天然水を仕込水として使用していますが、その仕込水と同じ天然水が100%流れ込む棚田で酒米を蔵元自ら栽培しています。
そのうち約半分が無農薬、無化学肥料で育てた酒米です。
このお酒はその無農薬、無化学肥料で育てた「酒こまち」を使用して醸したお酒になります。
手間がかかるうえ、通常の酒米の約半分以下しか収穫できないということで、大吟醸並みの価格になってしまうそうです。
近年、醸造期間も長くなり、雑草を取り除くような時間が取れなくなってきてしまい、29BYからしばらくの間(?)は発売できないとのことです。
この28BYは、非常に貴重な1本となりました。
今回ご用意したラインナップの中でも、ベスト3に入るような美酒でした。
近いうちに復活することを期待します。
③④は夏酒として発売されているお酒です。
③はリンゴ酸という特定の酸を通常の3倍も生成する特殊な酵母で仕込んであります。
したがって、酸は高めの設定になっています。
リンゴ酸は温度が低い方が美味しく感じられるらしいので、冷えた状態がやはり良さそうです。
ぐびぐびいけてしまえるようなお酒でした。
④は冷して飲む山廃がコンセプトになっています。
通常「山廃」はお燗に向くお酒が多いのですが、こちらはフレッシュな山廃ということで、基本的には冷酒で飲んで頂くことをお薦めしました。
ですが、お燗にしてみたいというお客様からのご要望もありまして、お燗(ぬる燗)にもしてみました。
思っていた以上にお燗でも美味しく飲めるお酒でした。
⑤⑥⑦はお米違いの飲み比べです。
山本さんは秋田県産のお米(酵母も)に並々ならぬこだわりがありますので、ほぼすべてに秋田県産の酒米を使用していますが、唯一⑥のみ県外産の備前雄町を使用しています。
「醸し人久平次」の雄町を飲んで衝撃を受け、自分でも醸してみたいと思ったからだそうです。
⑧は和韻(わいん)という当て字を使用していることからもわかるように、ワイン酵母を使用しています。
ワイン酵母だけだと酸が強く出過ぎてしまうため、秋田県の新酵母も使用したダブル酵母となっています。
日本酒だけでなく、ワインのテイストも感じられ、ワイン好きな方にもお薦めしたいお酒でした。
⑨⑩はブラックラベルに光る「山本」が印象的なお酒です。
⑨は「山本」シリーズ唯一の定番酒で、⑩とは酵母違いとなっています。
これまで⑨は季節限定で生原酒も発売されていましたが、今季29BYでは発売されないようです。
なぜ発売されないのか理由はわかりませんが、生原酒同士の飲み比べもしてみたかったので残念です。
⑪⑫は酵母違いの飲み比べです。
まったく同じ時期の仕込みとなりますので、蔵元としても飲み比べを想定して醸したものと思われます。
6号酵母は別名「新政酵母」とも言われている通り、新政酒造さんから譲り受けた酵母を使用しています。
一方、7号酵母は別名「真澄酵母」とも言われていますが、「一白水成」を醸す福禄寿酒造さんから譲り受けた酵母を使用して醸しているそうです。
これも秋田へのこだわりからでしょうか。
6号酵母で醸したものの方が味わいもしっかりしており、よりご好評を頂いていたようです。
⑬は瓶内2次発酵のスパークリング酒です。
ややうすにごりの活性にごり酒になっています。
揚物や炒め物とも相性の良い、辛口タイプのお酒です。
⑭は「白瀑」シリーズの最高峰となるお酒です。
きれいな造りはもちろん、バランス良く醸されており、絶賛される方も多数いらっしゃいました。
今回は「山本」シリーズがメインでしたが、「白瀑」を飲み比べてみても面白そうです。
⑮はまるで「どぶろく」のようなにごり酒です。
平成16年初めて発売されたときは、開栓すると噴き出てしまい、クレームがかなり多かったようですが、その後は改良され、微かに発泡感があるにごり酒になりました。
品質を重視したいという山本さんの想いが込められたお酒ばかりで、全体的にお客様からもご好評を頂きました。
それからお料理ですが…
先 付 女将特製 茸の旨煮いろいろ おろし添え
前 菜 牡蠣のベーコン巻き ハタハタの醤油干し いぶりがっこクリームチーズ 慈姑(くわい)の素揚げ
お造り 平目ポン酢
焼き物 関西風白焼
煮 物 女将特製 新じゃがと挽き肉の煮物
揚げ物 白魚と三つ葉のかき揚げ
食 事 うな丼 出し汁 薬味
香の物 胡瓜 大根 蕪 人参 守口漬
先付は女将の一品としまして、茸づくしで大根おろしも添え、さっぱりとお召し上がり頂きました。
我が家の朝の定番メニューです。
前菜は、秋田を意識したものもいくつかご用意させて頂きました。
この時期旬の牡蠣をベーコンで巻いて炒めたもの、そして山本合名会社さんのある八峰町は日本海沿岸にあり、ハタハタ漁でも有名ですので、ハタハタを使った醤油干し、秋田名物のいぶがっこを使った定番の一品、ほくほくして美味しい慈姑(くわい)の素揚げです。
お造りは、こちらも旬の平目を使い、ポン酢でお召し上がり頂きました。
煮物も女将の一品、新じゃがと挽肉を使った煮物です。
こちらもお酒がすすむ一品です。
揚物には、これから旬を迎える白魚を使ってかき揚げにしてみました。
春を感じて頂けると幸いです。
今回のテーマは「山本」ということで、乾杯は常連のお客様「山本」さんにお願いしました(笑)
「山本」をご堪能頂けましたでしょうか。
来月は福島のお酒をテーマにしたいと思います。
よろしくお願い致します。