廣戸川・自然郷を楽しむ会

昨日「廣戸川・自然郷を楽しむ会」を開催致しました。

ご参加頂きましたお客様、誠にありがとうございました。

 

「廣戸川」を醸しているのは、1892年創業の松崎酒造店さんです。

天栄村を流れる釈迦堂川が、かつては「廣戸川」と呼ばれていたことに銘柄名は由来します。

会津若松地方から南東に30キロほどいったところに天栄村という全国で3番目に広い村があり、そこに蔵を構えています。

かつては20軒ほどの酒蔵があったそうですが、少しずつ減少し、今ではわずか2軒になってしまいました。

そのうちの1軒が、松崎酒造店さんになります(もう1軒は寿々乃井酒造店さん)。

家族経営の小さな蔵ながら良酒を醸し、地元の人々に愛されてきました。

ところが、2011年3月、東日本大震災が起こり、この蔵に転機が訪れます。

南部杜氏の板垣弘氏が震災の心労で倒れてしまい、酒造りができない状態になってしまったのです。

そこで、以前から福島県清酒アカデミーで酒造りの勉強をしていた蔵元後継者の松崎祐行さんが、その年の秋から(23BYから)急遽、杜氏を務めることになりました。

見よう見まね、試行錯誤を繰り返しながら何とか仕込んだ「廣戸川 大吟醸」は、杜氏一年目にして全国新酒鑑評会にて金賞受賞という快挙を得ました。

その後も、なんと6年連続で金賞を受賞しています(今年も受賞すれば7年連続)。

かつては普通酒主体だったものは純米酒中心とし、温度や環境の変化にも変質しにくい酒質のしっかりしたものを造っていきたいと考えているそうです。

 

一方、自然郷を醸しているのは1865年創業の大木代吉本店さんです。

天栄村からさらに南東に10キロほどいった矢吹町に蔵を構えています。

昭和48年、有機肥料で米を栽培する篤農家との出会いがきっかけとなり「自然郷」は誕生しました。

当時はまだ三倍増醸酒が主流の時代でしたが、酒は本来、米と水のみが主原料であり(純米酒)、4代目の大木さんは三倍増醸酒に対して常々疑問を持っていました。

良いものを造るという精神が代々受け継がれていたため、酒本来の味わいを取り戻すことにしたのです。

しかしながら、発売当初はなかなか市場で受け入れてもらえなかったそうです。

ところが、1980年代になり、地酒ブームの後押しもあって、特に純米酒が注目されるようになりました。

「自然郷」は、純米酒の先駆けとして受け入れられたわけです。

しかし、大木代吉本店さんにも、2011年の震災を機に転機が訪れます。

14棟あった酒蔵のうち5棟が全壊し、その他にも大きな被害を受けました。

この逆境の中、5代目の大木雄太さんの酒造り魂に火が付きました。

これまでの季節雇用の杜氏制をやめ、自ら蔵元杜氏となり、社員だけで酒造りを行う体制へと変更しました。

今までは杜氏の勘や経験をもとに造られていたものをデータ化(数値化)し、酵母を変更し、酒の温度管理を徹底するなど、品質向上に尽力しました。

年々、理想とする酒である「華やかでクリアな味わいのもの」に少しずつ近づいてきているそうです。

 

それでは今回の出品酒ですが、乾杯酒を含めまして合計15銘柄です。

そのうち「廣戸川」は合計7銘柄です。

「自然郷」は合計8銘柄です。

この中で乾杯酒とさせて頂いたのは…

一番右端にあります「廣戸川 大吟醸 平成29年全国新酒鑑評会金賞受賞」です。

福島県の酒造好適米「夢の香」で醸した40%精米の大吟醸です。

一般的には「山田錦」で醸した大吟醸を出品することが多いのですが、福島産にこだわって出品され、金賞を受賞しています。

おそらく「夢の香」での金賞受賞は稀だと思いますが、しかも6年連続で金賞を取り続けているわけですから、「夢の香」の特徴を熟知していると言っても過言ではないかも知れません(特定名称酒のすべて「夢の香」を使用しています。

飲み干してしまうのがもったいないと途中まで残されているお客様もいらっしゃいました。

 

その他右から順番に…

①廣戸川 純米大吟醸

②廣戸川 純米吟醸 無濾過生原酒

③廣戸川 純米吟醸

④廣戸川 特別純米

⑤廣戸川 純米 にごり酒

⑥廣戸川 純米 秋あがり

⑦自然郷 凛 中取り純米大吟醸

⑧自然郷 セブン 中取り純米吟醸

⑨自然郷 セブン 純米吟醸 無濾過生原酒

⑩自然郷 セブン 純米 活性にごり

⑪自然郷 BIO 特別純米 無濾過生原酒

⑫自然郷 円融純米 秋

⑬自然郷 純醸 純米

⑭自然郷 ヨーグルト酒 ポンカン

 

①は「廣戸川」唯一の純米大吟醸です。

28BYより精米歩合が40%から45%に変更になったようです。

より米の旨みを感じられるような仕上がりになっています。

 

②は季節限定の生原酒です。

毎年スペックを変えて造られているようです。

29BYは、かなり出来が良く、美味しいとおっしゃる方が多かったです。

 

③④は「廣戸川」の定番酒です。

安心して使える食中酒タイプではないかと思います。

 

⑤は毎年最初に発売される新酒です。

飲みやすいにごり酒に仕上がっています。

 

⑥は蔵内熟成の純米酒です。

秋よりもさらに旨みがのった感じでしたので、お燗にしても美味しかったと思います。

 

⑦は「自然郷」唯一の純米大吟醸です。

28BYでは中取りではありませんでしたので、29BYではより質の高いものにグレードアップしました。

2017年9月から11月までJALのファーストクラスのラウンジで採用されていました(中取りではない28BYのもの)。

今回出品した「自然郷」の中で、特に好評でした。

 

⑧⑨⑩はセブンシリーズになります。

このセブンというシリーズは大木さんが杜氏になって初めて造ったお酒になるそうです。

ちなみにセブンには2つの意味があります。

一つが国内だけでなく、海外にも輸出していきたいということで、7つの海(北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋、北極海、南極海)を越えるという意味があるそうです。

もう一つは「うつくしま夢酵母」という福島県が開発した酵母を使用していますが、別名「F7」と呼ばれていますので、ここからセブンと名付けたそうです。

⑧の中取り純米吟醸は昨年まで「壱号」、「貳号」、「参号」とラベルに記載されており、わかりづらかったということからこちらに統一されたようです。

 

こちらは高温糖化山廃もとで造られています。

一般的な山廃よりも綺麗な味わいになるそうです。

大木さんが造りたいクリアな酒質のイメージに近いお酒ではないでしょうか。

 

⑫はこちらも蔵内熟成の純米酒になります。

すっきりとしたお酒を好まれるお客様からご好評でした。

 

⑬は伊勢志摩サミットで提供されたものになります。

実は蔵人の研修用として造られているそうですが、少しおりもからんでいます。

低価格で楽しめるお酒だと思います。

 

⑭はリキュール酒になります。

アルコール度数も6度と低アルコール酒になっています。

アルコール感もそれほど感じず、ポンカンがほどよくアクセントになっていて、アルコールが苦手な方にもお薦めできるリキュール酒でした。

 

それからお料理ですが…

先 付  新キャベツとあさりのお浸し

前 菜  たらこの旨煮 帆立の黄身焼き ホタルイカの蕨とろろ 蕗の信田巻き

お造り  長崎県産ホウボウ

焼き物  関西風白焼

煮 物  女将特製 卯の花

揚 物  河豚のさつま揚げ エリンギ 蕾菜

食 事  うな丼 出し汁 薬味

香の物  胡瓜 大根 蕪 人参 守口漬

 

先付は、春を感じられる新キャベツとあさりを使ったお浸しにしました。

前菜には、この時期だけのたらこを使ったあっさり味の旨煮、彩りの良い帆立の黄身焼き、淡く炊いた蕗を油揚げで巻いた信田巻き、もう一品は、とろろにみじん切りにした蕨を混ぜ、今が旬のホタルイカといっしょに召し上がっていただきました。

お造りは、冬から春が旬のホウボウをご用意いたしました。

女将の一品は、もうすぐ卯月ですので、卯の花にいたしました。

鶏肉、桜海老、れんこん、ごぼう、きくらげ、ねぎ、人参、椎茸が入った卯の花は、8種類の具材の旨みがしっかりと、しっとりとおからに入り、女将の一品のなかでも最も人気があるように思います。

揚げ物は、今が美味しい新たまねぎと彩りに河豚の皮をいれた自家製さつま揚げに出汁をかけ、おろし生姜を添えて召し上がっていただきました。

河豚のすり身を使いましたので、通常のさつま揚げよりも、滑らかな食感を楽しんでいただけたと思います。

 

お料理はいかがでしたでしょうか?

 

最後は、元体育会系応援団員のお客様による、本格的な「フレーフレー久保田」で締めて頂き大変盛り上がりました。

見事でした。ありがとうございました。

来月もよろしくお願い致します。