山田錦とその仲間たちを楽しむ会
昨日「山田錦とその仲間たちを楽しむ会」を開催致しました。
ご参加頂きましたお客様、誠にありがとうございました。
酒造好適米である山田錦は、現在100種類以上もある酒米の中で最も優れた品種と認知されており、「酒米の王様」と呼ばれています。
その山田錦は1923年、当時優良品種とされていた山田穂(やまだぼ)を母親品種として、短稈渡船(たんかんわたりぶね)を父親品種として、人工交配して誕生しました。
そして、1936年「山田錦」と名付けられ、兵庫県の奨励品種となりました。
その後、全国でも栽培されるようになり、33府県(2014年度)で栽培されていますが、そのうち約8割は兵庫県産となっています。
では、なぜ兵庫県で多くの山田錦が栽培されているのでしょう。
それは環境によるところが大きいと思われます。
山田錦が栽培されている六甲山周辺では夏季の日較差、すなわち最高気温と最低気温の差が10度以上あります。
また、水分や養分を保持しやすい粘土質の土壌であることなど、山田錦の生育に適しているためです。
その山田錦の生産量が徐々に増え、代わりに山田穂や短稈渡船は姿を消していきました。
しかし、近年、昔の酒米を復活、あるいは新品種となる酒米を開発する動きが全国で起こっています。
白鶴酒造さんでは山田錦に勝るとも劣らない酒米を造ることを目標に、「山田穂」を復活させることを試みました。
それは山田錦を超える酒米を造るには原点に戻るしかないと考えたからです。
そして、1991年60年振りに「山田穂」を復活させ、1995年に商品化しています。
その「山田穂」は「新山田穂1号」が正式名称で、これが「山田錦」の母に当たる品種となります。
また、最初に復活させたところは定かではありませんが、「短稈渡船」(渡船2号)も栽培されるようになり、その酒米で日本酒を造る蔵も少しずつではありますが増えています。
それでは今回の出品酒ですが、乾杯酒を含めまして合計13銘柄です。
この中で乾杯酒とさせて頂いたのは…
一番右端にあります「磯自慢 大吟醸 Nobilmente」です。
2016年に開催されましたG7伊勢志摩サミットのシェルパ会議における乾杯酒にも選ばれたものです。
皆さまにはじっくりお飲み頂きましたが、香りも素晴らしく、何とも言えない透明感に感動されるお客様もいらっしゃいました。
ただし、温度が上がると味わいがかなり変化したようで、説明書きにもありましたが、冷えている状態で飲み切るのが良さそうです。
その他右から順番に…
①鳳凰美田 純米大吟醸原酒 別誂至高
②而今 純米大吟醸
③高砂 松喰鶴 純米大吟醸
④東一 純米大吟醸 雫搾り斗瓶貯蔵 にごり酒 生
⑤日高見 天竺 純米吟醸 山田穂
⑥日高見 天竺 純米吟醸 短稈渡船
⑦会津娘 純米吟醸 山田穂
⑧会津娘 純米吟醸 短稈渡船
⑨宮泉 純米吟醸 山田穂
⑩宮泉 純米吟醸 短稈渡船
⑪鍋島 純米大吟醸 山田穂
⑫鍋島 純米大吟醸 短稈渡船
①は山田錦で醸した中で「鳳凰美田」の最高ランクに位置づけられるものになります。
一般的には「大吟醸」で発売されていますが、こちらは「純米大吟醸」規格となっています。
「別誂至高」の名前通り素晴らしいお酒でした。
②③はこの会でも大人気「而今」を醸す木屋正酒造さんが醸す2銘柄となります。
「而今」はこの日本酒会でも1、2を争うほどの人気酒ですが、③は来年木屋正酒造さん(1818年創業)が創業200周年を迎えるにあたり、新たに発売された銘柄となります。
「而今」を造る前は、「高砂」銘柄で主として地元向けに販売されていましたが、北海道の「高砂酒造」さんや静岡県の「富士高砂酒造」さんなどと混同することを避けるために新たなブランドとして「而今」を立ち上げました。
しかし、記念すべき新たな節目として、「高砂」ブランドを復活させて造り上げたものです。
ただし、造り手は同じです。
「而今」にも勝るとも劣らない素晴らしいものでした。
来年は200周年記念として特別なものを販売するのでしょうか。
期待してしまいます。
④は佐賀を代表する「東一」の最高ランクとなる逸品です。
ただし、「にごり酒」なんです。
これは特別に頂いたもので、一般には販売されていない「超」が付く程のレアものです。
ガス感もあり、大絶賛でした。
⑤⑥は「日高見」の天竺シリーズです。
「純米」規格でも、両酒米の飲み比べが出来るよう販売されていますが、今回はいわば高級バージョンです。
「日高見」はそれほど…という方もこちらのお酒は気に入って頂けたようです。
⑦⑧は「土産土法」をテーマに酒造りに取り組んでいる高橋庄作酒造さんの限定酒です。
発売されたばかりのお酒で、ぎりぎり今回の日本酒会に間に合いました。
出品して大正解でした!
特に「短稈渡船」で醸したものは素晴らしく、今回の出品酒の中で一番という方もいらっしゃいました。
⑨⑩は「寫楽」で有名な宮泉銘醸さんの地元限定酒です。
「寫楽」でも使用していない両酒米を使用していますので、こちらは「宮泉」ブランドでしか味わうことが出来ません。
廣木酒造さんが醸す地元酒「泉川」などでもそうですが、県内県外向けどちらのお酒も甲乙つけがたいほど素晴らしいお酒が多くなりました。
もちろんこの「宮泉」ブランドもその一つです。
⑪⑫は四合瓶でのみの販売されているものです。
今回ご参加頂いたお客様からのご意見を聞くと、両酒米の飲み比べでは「短稈渡船」に僅かながら軍配を上げる方が多かったようですが、唯一「鍋島」のみ「山田穂」の方にこちらも僅差ですが軍配を上げていました。
今回、8蔵の銘柄を出品致しましたが、どのお酒もハイレベルのものばかりで、すべてのお酒が空瓶になってしまいました。
これまでの日本酒会でもあまりなかったことで、出品者としても嬉しい限りです。
それからお料理ですが…
先 付 松茸のお浸し
前 菜 鯛の手毬寿司
あん肝の煮凝り
ししゃも
栗の渋皮煮
お造り 青森県産ヒラメの薄造り
焼き物 肝焼き
煮 物 女将特製 かぼちゃのそぼろ煮
揚 物 牡蠣の変わり揚げ タルタルソース
食 事 うな丼 薬味 出汁
香の物 胡瓜 大根 人参 蕪 守口漬
先付には旬の松茸を使ったお浸しです。
彩りが良くなるように春菊や菊花も使い、見た目も鮮やかで、松茸の香りも楽しんで頂けたのではないでしょうか。
前菜にはピリ辛のあん肝の煮凝り、見た目も可愛らしい小さな手毬寿司と旬のししゃもや栗をお出ししました。
お造りは河豚の薄造りをイメージして、ヒラメの薄造りです。
さっぱりともみじおろしとポン酢でお召し上がり頂きました。
煮物には、女将の一品としまして、今月ハロウィンもありますので、甘みも増して美味しいかぼちゃを使ったそぼろ煮をお作りいたしました。
揚物にはこちらもこれから旬をむかえる牡蠣を春巻きの皮で包んで揚げでみました。
お好みでタルタルソースでも味わって頂きました。
今回のお料理はいかがでしたでしょうか?
いつも恍惚とした表情で、うな茶漬の出し汁を飲み干す常連のお客様です。
ありがとうございます。
次回は来月11月に「高木酒造酒米三部作を楽しむ会」を開催する予定です。
皆様のご参加お待ちしております。
よろしくお願い致します。