生もとを楽しむ会
昨日「生もとを楽しむ会」を開催致しました。
ご参加頂きましたお客様、誠にありがとうございました。
日本酒の造り方(酒母の造り方)には大きく分けて、2通りの方法があります。
一つが「速醸もと」といって、現在主流となっている方法です。
もう一つが今回のテーマにもなっている「生もと」という方法です。
両者の違いですが、「乳酸」が一つのキーワードとなります。
すなわち、人工の乳酸を添加するのか、乳酸菌を一から育てて乳酸を生成するのかの違いとなります。
「速醸もと」は酒母を造るにあたり、米、米麹、水、そして酵母と同時に人工的につくられた乳酸を投入し、雑菌の繁殖を抑えて優良な酵母だけを増やし、アルコール発酵を促進する方法であるのに対し、「生もと」は米、米麹、水、酵母を投入するのは同じですが、蔵の壁や天井、空気中に生息している自然の乳酸菌を育て、乳酸を生成し、雑菌の繁殖を抑えて優良な酵母を増やし、アルコール発酵を促進する方法です。
その「生もと」は江戸時代に確立された方法で、明治時代の中期から後期にかけて主流とされていました。
しかし、時間も労力もかかるうえ、高度な技術が必要とされていました。
そこで、1910年(明治43年)に開発されたのが「速醸もと」というわけです。
また「生もと」にはもう一つ大きな特徴があり、それが「山卸」という作業になります。
この「山卸」という作業は重労働であったことから、1909年(明治42年)これを排除した方法も開発されました。
すなわち、「山卸」を廃止した「もと」なので、略して「山廃もと」と言われています。
それでは今回の出品酒ですが、乾杯酒を含めまして合計14銘柄です。
この中で乾杯酒にさせて頂いたのは…
一番右端にあります「DATE SEVEN 生もと純米大吟醸」(宮城県)です。
宮城県の7つの蔵で結成された酒蔵ユニット「DATE SEVEN」の3季目となる日本酒です。
毎年造りの工程を分担して1本のお酒を仕込むわけですが、今回のリーダー蔵となったのが「萩の鶴」や「日輪田」を醸す萩野酒造さんです。
美山錦を33%まで磨いた「生もと」の純米大吟醸となります。
「生もと」ながら爽やかなお酒となっています。
その他右から順番に…
①フモトヰ 生もと純米大吟醸 斗瓶囲い(山形県)
②上喜元 中取り 生もと純米吟醸 雄町(山形県)
③番外自然酒 生もと純米 直汲み別誂え(福島県)
④羽水 生もと(栃木県)
⑤鏡山 生もと純米 無垢 生(埼玉県)
⑥黒澤 生もと純米 穂積 秋あがり(長野県)
⑦遊穂 生もと純米 玉栄 生原酒(石川県)
⑧米宗 生もと特別純米 特A山田錦 無濾過生原酒(愛知県)
⑨松の司 生もと純米 生原酒(滋賀県)
⑩純青 生もと特別純米 無濾過 山田錦(兵庫県)
⑪三光天賦 生もと純米 雄町 無濾過生原酒(岡山県)
⑫大典白菊 生もと純米 雄町70 無濾過生原酒(岡山県)
⑬馨嘉 生もと純米大吟醸(山口県)
①は麓井酒造さんの最高峰となるお酒で、東北清酒鑑評会やその他コンテストに出品することを目的として造られたものです。
麓井酒造さんでは以前から全量生もと造りとなっており、生もと造りにこだわりを持たれている酒蔵さんになります。
ちなみに、同じ山形県の「初孫」を醸す東北銘醸さんや福島県の「大七」を醸す「大七酒造」さん、そして秋田県の「新政」を醸す新政酒造さんなど、全量生もとで醸す蔵も増えてきました。
②は酒田酒造さんが醸す生もと造りの日本酒の中でも高精米のものとなっています。
③は四段仕込で有名な「金寳自然酒」ではなく、三段仕込となる番外バージョンとなります。
無農薬、無化学肥料の自然米を使用し、米の旨み、甘みを上手に引き出しています。
④は「仙禽」で有名な仙禽酒造さんが醸す別ブランドとなります。
兄弟でお酒造りをされていますが、「仙禽」はお兄さんの薄井一樹さんがる全面的に統括されていますが、「羽水」は弟さんの真人さんがプロデュースしたお酒になります。
「仙禽」にも似た味わいのお酒でした。
⑤が蔵の街、川越で平成19年に創立した小江戸鏡山酒造さんが醸す銘柄です。
23BYより生もと造りにも挑戦しています。
⑥は季節的にひやおろしのシーズンでもありますので、今回のラインナップの中では唯一となる秋酒(ひやおろしや秋あがり)です。
ラインナップのほとんどが生もと造りのお酒となっています。
⑦は能登杜氏の横山俊昭さんではなく、女性蔵元の藤田美穂さんがすべて仕込んだお酒になります。
「遊穂」という銘柄にはなっていますが、いつもの「遊穂」とは異なる味わいに仕上げてあります。
ちなみに、このラベルデザインは日本酒とエロスをテーマにしたものとなっており、矢野徳さんという漫画家の方にデザインしていただいものになるそうです。
⑧を醸す青木酒造さんは「山廃」や「生もと」をメインに造られており、こちらも濃厚なタイプのお酒となっています。
ぬる燗、熱燗と試してみましたが、ぬる燗にした方がいいというお客様が多かったようです。
⑨は若手杜氏石田敬三さんが醸すお酒です。
以前は「山廃」で造られていたようですが、石田さんが杜氏になられてから蔵付き酵母の「生もと」に変更したそうです。
⑩は富久錦酒造さんが造る新ブランドです。
こちらで醸すお酒は全量純米酒となっています。
⑪は「奥播磨」(兵庫県)を醸す奥播磨酒造さんや「芳水」(徳島県)を醸す芳水酒造さんでも杜氏をされ、その後20BYより三光政宗酒造さんで杜氏となった高垣克正さんが27BYで引退され、28BYより副杜氏をされていた山上道弘さんが高垣イズムを継承して造られたお酒です。
冷酒で味わうより、常温で味わう方がこちらのお酒の良さが出たようです。
⑫は全量自家精米も行う、米にこだわる白菊酒造さんが醸す生もと酒です。
⑬は「五橋」ブランドの一つ、「馨嘉」ですが、北九州の倉松酒販さんに卸されている限定酒です。
「五橋」を飲まれている方もこちらは初めてだったようです。
こちらも好評でした。
日本酒会では初出品となる銘柄も多々ありましたが、お楽しみいただけたでしょうか?
それからお料理ですが…
先 付 ズワイガニと菊花と胡瓜の酢の物
前 菜 鶏肉とクリームチーズの味噌漬
塩煎り銀杏
海老のクリームソース掛け
お造り メバチまぐろ中トロ イサキ
焼き物 関西風白焼
煮 物 女将特製 肉じゃが
焼き物 鰆の素焼きチーズIN 舞茸 ししとう トマト
食 事 うな丼 薬味 出汁
香の物 胡瓜 大根 人参 蕪 守口漬
先付には乾杯酒に合わせて、さっぱりとした酢の物でお出ししました。
前菜は「生もと」とも相性が良いチーズやクリームソースをメインに旬の銀杏を加えてお作りしました。
煮物には女将の一品としまして、こちらも「生もと」と合わせたい食材、牛肉を使用した肉じゃがです。
そしてもう一品はこちらも焼き物になりますが、素焼きにチーズも加えたものです。
今回のお料理はいかがでしたでしょうか?
3カ月振りとなる日本酒会でしたが、あっという間の3時間でした。
これまで「生もと」で醸した日本酒に抵抗があった方も、今回の日本酒会で「生もと」のイメージが変わってくだされば幸いに思います。
次回は10月に開催予定となっております。
皆様のご参加お待ちしております。
よろしくお願い致します。